2018年に出版された『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子)や『誤解だらけの人工知能 ─ ディープラーニングの限界と可能性』(田中潤・松本健太郎)を読めば、2018年時点で人工知能がどのレベルに達しているのかがよくわかる。
人工知能の現時点での能力としてわかりやすいのは画像検索能力である。
Googleが開発している人工知能は、3日間で1000万枚の猫の画像をデータとしてインプットされた結果、写真に写った猫を認識できるようになった。
ただし、猫が生き物であるとか、愛らしいとか、そうした属性はまったく認識していないので、たまたま猫の顔のように見える木目とか壁のシミとか生物ではないものまでも「猫」と認識することがある。そこが人間との決定的な違いである。
人工知能は人間によって適切に加工されたデータを与えられなければ何もできないので、膨大な加工済みデータを準備することが重要な作業になる。したがってGoogleやAmazon、Facebookなどビッグデータを持っている企業に強みがあり、どの企業もデータ収集にやっきになっている。
普及し始めているスマートスピーカーは家庭の音声データの収集のために使われるらしいので要注意。
大量のデータを瞬時に分析するのは人間よりも得意である。
将棋ソフトのように、過去の膨大な対局データを与えられて、ある局面の限られた選択肢(指し手)の中から勝利につながる手を選び出すような作業には向いている。
人工知能は「意味」を理解できない。
例えばある人物が黒い衣服を来ていた場合に、「黒い服」を認識できても「喪に服しているのかも知れない」「だから暗い顔をしているのかも知れない」などとまでは考えない。
空気を読まないので、敬意とか配慮とか忖度とかそういう気配りが必要とされる接客サービスには向いていない。
「あなたなんて、大嫌い」という女性の言葉と涙の真意も理解できない。
世の中の多くの男性が理解できないので問題はないかも知れないが(笑)
少なくとも現時点で、そしてこれから2、30年は、機械的な単純作業や限定的で専門的な作業を除けば人間の仕事が人工知能(AI)に奪われるということはなさそうである。AIについて知れば知るほど、逆に人間のもつ能力の高さが見えてくるのが興味深い。
なお、現時点で「AI搭載」などと宣伝しているサービスの大半が、ディープラーニングに基づいた人工知能を使っているわけではないので、惑わされてはいけないらしい。
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