2012年10月24日水曜日

アラブの春

『「アラブの春」の正体 − 欧米とメディアに踊らされた民主化革命』重信メイ 著
を読んだ。

中東については、マスメディアのごく限られた、
そしておそらくかなり偏った情報しか得られないし、
観光旅行などで訪れるような場所も少ないので
文化・宗教的にもあまり馴染みがなく
はっきり言って、よくわからない世界である。

20年くらい前に、エジプトを2週間ほど旅行した時に
けっこう地元のエジプト人何人かと話をしたり
一緒に旅をしたりしたので
その時に歴史や宗教観を話し合ったくらいの知識しかない。

いわゆる「アラブの春」については、授業の中で
「ソーシャルメディアによる革命」
「ウェブの力がアラブの民衆を解放した」
みたいな一言でまとめてしまっていた。

当然といえば当然だが、
現実はそんな単純でもハッピーなものではなかった、
ということがこの本を読んで分かった。

20年前にエジプトで出会った知識層の若者たちが
自分たちの境遇に対して怒っていた理由も
ようやく今になって理解できた気がする。

ソーシャルメディアが必ずしも人々を幸せにするものではないことも。

2012年10月20日土曜日

「市民メディア」という名称について

私は2002年くらいから、北海道の稚内市という地方都市で
「映像による地域情報の発信」という活動をボランティア的に続けてきて
(個人ではなく、NPO法人としての活動である)
それを「市民メディア」と呼んで研究も続けてきたのだけれど、
この呼称が結局あまり普及しないまま、消えてしまいそうな気配である。

何か名前がないと論文を書くときに困るのだけれど、
CGM(Consumer Generated Media)や
UGC(User Generated Content)などの英語は
やっぱり日本では馴染まないし
(IT業界で頭文字用語が多すぎるのだ)
「オルタナティブ・メディア」とか「草の根メディア」だと
マス・メディアと対抗するジャーナリスティックなメディアみたいになるし、
「一般のユーザが投稿したコンテンツ」の総称がなかなか見つからない。

「ソーシャルメディア」という名前はすっかり定着した感があるが
やっぱり市民メディアとはちょっと違う存在だし...。

自分的にはUGC(ユーザ生成コンテンツ)が
一番理想に近いのだけれど、
どうも一般の人には覚えてもらえそうにない。

覚えやすい名前がないと普及しないので、
なんとかならないかと思いつつ、
もう10年近くが経過しようとしているのだった...

2012年10月9日火曜日

研究対象としてのmixi

mixiが試験的に「足あと」機能を復活させるらしい。
すでに乱獲して魚がいなくなった海に、今さらエサを撒いても遅い。

以前の黄金期のmixiには
研究対象として非常に興味を持っていた。

特に、「足あと」と「日記」継続の関係とか、
匿名の「コミュニティ」の人気の秘密とか、
「鬱日記」の効用とか、
いくらでも研究テーマが見つかる場所だった。

でも、本腰を入れて研究を始めようとした直後に
次々と新たなサービスが導入され、
mixi独自の魅力と思われた機能が次々と廃止または改悪され、
研究テーマの廃墟と成り果ててしまったのだった。


「ユーザーファーストなmixiを目指して」なんて言ってるけど、
今までは何をファーストに考えていたのだろう...




2012年10月6日土曜日

テレビ vs facebook

テレビの時代は終わり、今はウェブの時代なのだ
的な話を授業で話したりすることがあるのだけれど、
そう単純に総括できるものではないということを
改めて実感させられる出来事があった。

5年くらい前、稚内の大学にいた頃に
人気番組の「笑ってコラえて」に出たことがある。
地元の人がオススメの飲食店を教えるというようなコーナーで
ほんの3分程度の出演であった。
(いきなりアポ無しで取材に来た)

その時の反響はけっこう大きく、
地元の人から「テレビ見たよ」と何度も声をかけられたし
旭川に住む親戚からも電話がかかってきた(笑)
数ヶ月後に再放送された時にも、再び「有名人」になった。

テレビの影響力はすごいなぁ、と実感させられたものである。

ちなみに、学生たちと作った映像にも何度か出演して
YouTubeでいつでも観られるようにはなっているのだけれど、
「YouTubeで観たよ」と言われたことはまだ一度もない。


それから約5年後の昨日、
facebook経由で見覚えのない名前の人からメッセージが届いた。
15年くらい前に、札幌で何度か一緒の飲み会に参加したという女性だった。
私の記憶力はかなり低下しており(昔から低かったが)
名前を見ただけでは全然思い出せない。

何度かメッセージを交わして分かったのは、
彼女は数年前のテレビで私を見たときに
友人と「懐かしいねー」的な会話を交わしており、その後
今年から利用し始めたfacebook上で私を見つけたということだった。


facebookってすごいなぁ、と実感。


15年前に何度か会ったことがあるという程度の知り合いで
しかも当時とは遠く遠く離れた場所に住む人間を
簡単に見つけ出して連絡をとれてしまうのである。

知ってるのは名前だけで、電話番号もメールアドレスも知らない状態で
札幌→稚内→愛知と渡り歩いてきた私を見つけ出すことは
調査会社とか探偵でもそう簡単なことではないはずである。

まあ、facebookのすごさというよりは、
実名制ネットワークのメリットがここにあるわけである。

単純にまとめると
テレビもすごいし、ウェブもすごいということか(笑)